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メイユール、meilleur、愛森、紗綺、菜緒、喫茶店、小説、ほほえみ、ひかる

 ■ ご案内 | INFORMATION
オリジナル小説。『 メイユール -Meilleur- 』
喫茶店を営む姉妹" 愛森 紗綺, 愛森 菜緒 "の物語。
 ■ 第一話 | PROLOGUE


Caf'e "Meilleur"

〜 prologue 〜





いつもの時間。
いつもの店。
いつもの顔ぶれ。

誰しも、落ち着く場所がある。
安らぐ場所を持っている。

気取らず、腐らず、親しみを持って。
話し合える、仲間が、いる。



いつからだろうか?
この店に来るようになったのは。



初めて訪れたときのことなんてもう覚えていない。
ふと、立ち寄っただけのような気もする。






いつものようにドアを開く。
カラン♪コロン♪……
「あ、いらっしゃい。奥が空いてますよ」
カウンターから紗綺が教えてくれる。



そうだ。
初めてのときも、こうだった。

まるで自分が、毎日ここに通っているかのような
暖かさがあった。

「ありがとう。じゃぁ、『いつもの』ね」
そう言いながら奥のボックスへと入る。
「はい。い・つ・も・の・ですね♪」



店はそんなに大きくはない。
特に派手な店内でもない。
メニューが珍しいわけでも、とりたてて多いわけでもない。



なぜだろうか?
この店に来るようになったのは。



「おまたせーッ☆」
明るい声と共に飲み物が運ばれる。
紗綺の妹。愛森菜緒。

「ねぇねぇ。いつも同じ物ばかり飲んでて、飽きないの?」
可愛らしい瞳が投げかける疑問には邪気が無い。

「そりゃぁ。飽きるさ」
「なんだ。じゃぁ違うもの頼めばいいのに」
「いや。飲む為だけに来てる訳じゃないから、いいんだよ」
「ふーん……そうなんだ……」
 なんだか少し複雑な表情をみせて、彼女は店の入り口へ振りかえる。
「どうしたんだろう。今日、みんな遅いね」



「よいしょっと」
菜緒はボックスの向かい側に腰を下ろす。



「お姉ちゃん綺麗だからね」
カウンターの紗綺を見ながら菜緒が独り言のように言う。
「私も……お姉ちゃんみたいに……」



カラン♪コロン♪……
「あ。来た来た。またあとでね♪」






いつもの時間。
いつもの店。
いつもの顔ぶれ。

誰しも、落ち着く場所がある。
安らぐ場所を持っている。

気取らず、腐らず、親しみを持って。
話し合える、仲間が
ここに、いる。





 ■ 第二話 | SKYHIGH
「いやだなぁ、もう。急に降ってくるんだモン」

 小春日よりの暖かな日の夕方。
 急に降り出した雨の中を傘も挿さずに走る少女。
「天気予報って当たらないなァ。傘持って出ればよかった……」

 ブラックのロングソックスにコントラストの利いた白黒のスニーカー。
 前髪が少し長めのショートカットヘアーに紺色のヘアバンドが覗く。

 ばしゃばしゃと派手に水飛沫を上げて、少女は家路へと向かう。

 車通りの多い、大道路から脇へ入り七つめの交差点を左。
 閑静な住宅街の入り口となる「緑ヶ丘第2公園」の向かいに、その喫茶店はあった。

「えーっと、鍵、鍵っと……」
 すっかり雨にぬれてしまった鞄の中から、喫茶店の裏口のキーを捜す。
 慌てているからか、なかなか見つからない。ファスナーにつけている小さな人形が、かちゃかちゃと音を立てる。

「駄目だ、みつかんない!! 表から入っちゃお☆」
 鍵探しを諦め、少女は喫茶店の表へ向かう。道路に面した喫茶店の入り口には「OPEN」の札が、かかっている。

 カラン♪コロン♪……
「ただいまーッ!!」
 元気よくドアを開けて中へ入る。
 ようやく雨の冷たい雫から逃れる事が出来た少女は、ふぅーっとひと息、深呼吸をした。
「よし! 時間ぴったり!」
 下校時刻から少し走ってドア・ツー・ドアの二十五分。


「菜緒っ!!」
 喫茶店内のカウンターから少女を呼ぶ声がする。
「営業中は裏口から入りなさいって、いつも言ってるでしょう!」

「だって、鍵見つからなかったンだもん……」
 頭からずぶ濡れの状態で、奈緒と呼ばれた少女はカウンターの中の女性に答える。

「それに、今、誰も来てないじゃん……」
 喫茶店は入り口がさほど大きくなく、一見すれば普通の家と見間違えてしまう外観。

 ふとした気分で立ち寄る人々が集まる小さな茶店……といった感じである。
 今日は雨が降っているせいか、いつもの常連客も、まだ顔を見せていないようだ。

「だからって、そんな格好で入ってきて……。お客さんが居たらどうするつもりなの? 下着が見えてるわよ……」
「あ、ヤベッ!!」
 白い制服が雨に濡れて、下着まで透けてしまっている。

「ン、ックシュン!!」
「ほら、風邪ひくわよ! 早くシャワー浴びてらっしゃい! 出たらお店の手伝いを、お願いね」
「ハーイ」

 投げられたタオルを頭にあてながら、奥の部屋へと走っていく少女。
 バタバタとする妹を見ながら、カウンターの女性は、「はぁ……」と、ため息。

「いつまでたっても……」



 車通りの多い、大道路から脇へ入り七つめの交差点を左。
 閑静な住宅街の入り口となる「緑ヶ丘第2公園」の向かいの喫茶店。

『メイユール』という名のその喫茶店には、今日も仲間たちが集まって来る。



 カラン♪コロン♪……
「あ、いらっしゃいませ。奥が空いてますよ」
「お久しぶり、紗綺さん。ブレンド、お願い」
「はい☆ お待ち下さい」



「着替え、完了!」

 シャワーを終え、ラフな格好になって店内に戻ってきた少女は、カウンターの中の紗綺と呼ばれた女性に告げる。

「お姉ちゃん! そと、みて、外!」
「ちょっと奈緒! もうお客さんが来てるでしょ!」

 客前でもあっけらかんとしている妹に注意する女性。しかし、少女は全然気にする様子が無い。

「なんだ、コウちゃんじゃん! おひさ!」
「はっはっは。まぁ紗綺さん、いいじゃないか。奈緒ちゃんは元気が一番だ」

「そうだ! 元気が一番だ!」
 コウちゃんと呼ばれた客の台詞を真似ながら、さも当然! といった雰囲気で開き直る少女。

 カウンターの女性は頭に手をあてて悩んでいる。



「だから! おねぇちゃん! 外!」
「なんなのよ……もう」

 煎れかけのコーヒーをそのままに、妹につられて外へ出る。

「ねっ。綺麗でしょ」

「…………。本当……綺麗ね……。久しぶりに見るわ……」



 夕暮れどきの雨も上がり。

 東の空には、七色の橋が、架かっていた。

 ■ 第三話 | AFTERNOON
 穏やかに晴れた休日。
 心地よい風が辺りを包む。
 雲がぽっかり浮かぶ青い大空から、太陽が笑顔を見せている。

 公園前の喫茶店。
 三階建ての建物の、屋上にある小さな小屋。
 小さなその小部屋にある机の上には、「数学V」と書かれた赤い参考書が開かれて置かれていた。
「ZZZ……」
 その机にうつぶせる様にして、紺のヘアバンドをつけた一人の少女が気持ちよさそうに軽い寝息を立てている。
「ふみ……」

 そんな少女のところへやって来るポニーテールの女性。
「あらあら……」
 少女の肩へと手を伸ばし、起こそうかとして彼女はふと動作を止めた。
「そうだ……」
 肩を叩くのをやめた彼女は、少女を起こさないように気を配りながら机の上のゴミを取り除いて綺麗にしてから、静かに部屋を出ていった。

 五分ほどして、再び戻ってきた彼女の手には、スッキリと冷えたアイスコーヒーが用意されていた。
「起きなさい……菜緒」
「ンー? 紗綺ちゃん?」
「……。……おつかれさま。コーヒー入れてきてあげたから。飲みなさい。ネ」
 目をこすりながらぽにゃっとしている少女に、固く絞ったおしぼりを渡す。
「サンキュー……」
 手の跡がついてしまった顔をおしぼりで拭きながら、少女は頭を動かして目を覚ます。

「あれ、お姉ちゃん。いつもとカップが違うね。」
「うん。アイスだからね。いつものが良かった?」
「ン、これでいいよ。アリガトッ」
 姉に作ってもらったアイスコーヒーを受け取り、浮かんでいる氷をカラカラとまわす。窓越しの光が、ガラスの雫とともに踊っている。

「自分の部屋で勉強したら? エアコンもあるんだから」
 紗綺が菜緒に話しかける。
「うーん、でも……。なんとなく今日はここなんだなぁ……」
 菜緒はアイスコーヒーを片手に立ち上がり、家の前の公園を眺める。
 今日の公園には誰もいないようだ。学生は夏休みに入りはじめている。ちょうど家族旅行などがはじまる時期だろうか。夏風に吹かれて、公園の木々がさわさわと揺れている。
「いい天気だナァ……」
 空にはゆっくりと雲が流れている。少し前に飛行機が通ったのだろう。一筋の飛行機雲が青いキャンバスに真っ白な線を描いていた。
「難しいことやってるのね」
 菜緒の勉強していた参考書を開いて、紗綺が言う。
「あれ? お姉ちゃんに薦めてもらった参考書だよ。それ」
「? そうだったかしら?」
「あーあー……。紗綺ちゃん、ボケちゃったか……」
 コーヒーを飲みながら姉を見ていた妹は、再び空を仰ぎ遠い目をしてそうつぶやいた。

 手もとにあるおしぼりを投げそうになった紗綺だったが、そこは大人である。グッとこらえて口を開いた。
「……。そうそう、菜緒」
「ン?」
「私のことを『紗綺ちゃん』って呼ばないように。恥ずかしいから」
「……そうかな? 可愛いじゃん」
「…………」
 いくら言っても、これだけは直らない。
 にっこりと笑った菜緒は、空を見ながらアイスコーヒーを飲んでいた。



「まぁ、いっか……」
 妹の穏やかな笑顔につられ、紗綺もコーヒーを飲みながら空を見る。
 青い空は天高く、澄んだ世界を広げていた。



「ありゃ……」
 しばらくして。
 菜緒がテーブルを見ると。

 椅子に腰掛けていた紗綺が、気持ちよさそうに寝息を立てていた。

 ■ 出演 | CAST
愛森紗綺(SAKI AMORI)
  喫茶店"MEILLEUR"オーナー
  長女

愛森菜緒(NAO AMORI)
  次女
 ■ 重要なお知らせ
現在、重要なお知らせはありません。



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